伝統的な烤鴨はガスコンロなどを使わず、果木で起こした炎を使って窯の中で炙る。炙る際、北京ダックは窯の中で吊るすのが基本だ。吊るすことで北京ダックの過剰な脂がしたたり落ち、絶妙な味わいになる。窯の形状も重要で、使用する窯は大きく分けて2種類。ひとつは挂炉〔Gua4 Lu2〕と呼ばれる入り口の開いた窯、もうひとつは入り口が密閉された燜炉〔Men4 Lu2〕。
挂炉の場合は高温の強火で豪快に焼きあげ、燜炉の場合はとろ火で蒸し焼きにすることが多い。
ちなみに前者の挂炉焼きを代表する店が全聚徳で、後者の燜炉焼きが便宜坊だ。どちらも言わずと知れた老舗だが、1859年創業の便宜坊が北京では一番古い歴史を持つダックの元祖。それに続き1864年に全聚徳が誕生した。
当時、便宜坊のほうが味や評判は上であったといわれるものの、途中で一度倒産の憂き目に合い、のちに復活。一方、全聚徳は途絶えることなく今まで続いている。さらに現在ではこの2つの老舗のほかにも、味に定評のある人気店、親しみやすいチェーン店などが続々と登場している。
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