2003年春に世界を騒がせたSARS(新型肺炎・重症急性呼吸器症候群)について、人類は新たな爆弾を抱えてしまったといっていいのかもしれない。未だ確立された治療法がないため、人々から恐れられているが、きちんと対策さえとれれば防ぎようがないわけではない。中国では過去の苦い経験があるために、我々としては参考にしなければならないことも少なくない。今後、中国での大流行の可能性は低いと思われるが、それでもこれから初めて中国に行く人は基本的な予防知識を身につけておきたい。
■いかに予防するか?
有効なワクチンの開発が終わるまで、基本的な対策で予防するしかない。飛沫感染が指摘されているため、まずは手洗い・うがいの励行が大切だ。薬用石鹸は市内の薬局でも手に入る。とくに公共の交通機関などを利用したときなど、特に手すりにつかまったりしたときはしっかりと手を洗いたい。また部屋の換気には十分に気をつけよう。冬場はエアコンを多用するために、どうしても空気がこもりがちだ。その他、中華料理を食べるときも、なるべく大皿を各々の箸でつつくのではなく、小皿に分けるようにする。
当然、免疫力を高めるために、睡眠と規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度の運動などは大切。WHOなどでも中国医学の生薬のSARSに対する有効性が指摘されているが、SARSが流行している時期には、免疫力を高めるための生薬を配布した学校や会社も少なくなかった。またタクシーの運転手やレストランや理髪店などサービス業に携わる人たちは、仕事中はマスクの着用を義務付けられた時期もあった。マスクをつけるということは、咳嗽などをしたときに飛沫を飛ばさないという意味でも重要であるとされた。
■インフルエンザのワクチン
卵アレルギーがある人など、今までインフルエンザワクチンを接種して副作用があった人以外は、10月頃にインフルエンザの予防接種を済ませておくことが望ましい。予防接種を行うことにより、万一インフルエンザにかかっても症状や経過を短くすることが可能で、38℃以上の熱にもなりにくい。中国政府は免疫力の弱い人、60歳以上の人、子供、慢性疾患のある人、医療関係者などはなるべく予防接種を受けるようにと通達を出している。インフルエンザの予防接種を受けることにより、発熱患者を減らすことができるほか、病院内での院内感染の予防にも役立つ。またインフルエンザの症状と初期のSARSの症状は似ているため、インフルエンザの予防はSARS予防と深く関係がある。
■情報の収集
2003年春にSARSが流行したときには、巷にさまざまなデマが流れ、多くの市民が不安に慄いた。そのため、日ごろから新聞やテレビ、ラジオなどから情報をとれるようにしておかなくてはならない。「エクスプロア中国」でも現地の状況変化などを即時伝えている。ここではホームページを紹介しておく。
日本大使館:http://www.cn.emb-japan.go.jp/jp/01top.htm
中国衛生部:http://www.moh.gov.cn/zhgl/zt/index.htm
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